教員紹介

北後 明彦 (ほくご あきひこ)

略 歴

研究課題

都市に住まう人々の変化や,都市を取り巻く環境変化により,地震や風水害などの災害危険性が高まっていること,高齢者が地域や高層・超高層の集合住宅で多数居住するようになることによる災害や事故に対する能力の低下,さらに,格差・競争の激化による社会の不安定化にともなう事件や事故の増大などがあり,現在,安全に生活することへの関心が高まっている。それにもかかわらず,都市環境の巨大化,複雑化がさらに進む傾向も一部ではみられ,災害への対応が困難となることが心配される。一方,環境・共生の時代といわれるように,地域の持続可能性を重視し,地域の歴史や文化を尊重して地域にある独自性のあるまちを残すとともに,ヒューマンスケールで歩いて暮らせるまちづくりや,衰退の激しい中心市街地を再びにぎわいのあるまちへとめざす中で,安全で安心できるまちづくりを目指す方向性も見られるところである。このような生活空間のおかれた現状についての問題意識から,これから取り組むべき課題は以下の通りと考え,これらの課題を推進している。

(1) 生活者とともに生活空間の安全を達成するための工学の確立
ただ単に安全だからということで,その対策が選択されることはない。そうした意味では,これまで地域の環境や経済特性等を考慮せずに,防災計画を立案するだけで,実施には至らないということが続いた。地域住民が本当に求める安全と環境が両立するとともに経済的にも成り立つことが可能であることを提示できる工学を確立する必要がある。その際,現実の都市空間を対象とした具体的な計画・設計論とする必要がある。具体的な場所において,災害に対する都市の生存・生活環境の変化を考慮にいれて,実践的に地域住民が取組みうるか検討をすすめることにより,現実社会への貢献をなしうる技術体系を作り上げることができると考える。

(2) 現代的ニーズに適合する地域・建築のあり方の安全からのアプローチ
現在,高齢化の時代,地方の時代となって地域のあり方,建築のあり方が問われ,その新しい形態への模索が行われている。その際,安全性にいかに配慮するかが大きなポイントとなろう。そうした意味では,高齢者や災害弱者を考慮した防災対策に関する研究,伝統的町並みの防災性向上に関する研究などへの取組みが重要となる。

おもな著作

ひとこと

研究を行っていく際に重視すべき点として挙げておきたいのは,実地のフィールドに依拠することである。具体的に取組みを行う場を重視すること,また,災害があればその現場において経験と教訓を蓄積していくことを基本として行きたい。